東京高等裁判所 昭和37年(ネ)126号 判決
控訴状の末尾に証拠方法として一部弁済に関する所論の抗弁事実につき証人井上平四郎及び控訴本人(上告人)小梛奨の各尋問を申請する旨附記されており、右は期日前の証拠申出と解されないではないけれども、第一審以来の口頭弁論の経過を見ると、上告人は適式の呼出を受けながら第一審の第一回口頭弁論期日に出頭しなかつたので、即日結審となつたが、申立により弁論が再開され、第二回口頭弁論期日において上告人は所論の一部弁済の抗弁を主張しその証拠として証人井上平四郎を申請し、これが採用されて、次回第三回口頭弁論期日に同証人が尋問されることになつたけれども、上告人はその証拠申出書尋問事項書を次回第三回口頭弁論期日前に提出しなかつたので、証人の呼出手続未了のところ、書記官宛に「証人病気のため延期を乞う」旨の電報を発したのみで右期日に出頭せず、その結果第一審は証人の取調を取消し、同日弁論を終結し、次回第四回口頭弁論期日に判決を言渡したところ、上告人はこれに控訴したが、原審第一回口頭弁論期日には又も出頭しなかつた。
かような第一審以来の口頭弁論の経過に照らすと、上告人は故意に訴訟の引延しを図つているものと認められてもやむないものと謂うべく、かかる場合原審が前記の通り期日前に申請のあつたものと認められる証人井上平四郎及び上告人本人を取調べなかつたにせよ、これを以つて唯一の証拠を取調べなかつた違法があると断ずることはできない。
(梶村 室伏 安岡)